ワールド体験記 その3

こんばんは、犬束です。

今回はR3です。

Motion: THW allow soldiers to sue their government for negligence.

1位 Closing Government UNI OF HELSINKI C(フィンランド)75点,74点
2位 Closing Opposition UNI OF ZAGREB C(クロアチア)70点,71点
3位 Opening Opposition UNI OF CENTRAL MISSOURI B(アメリカ)69点,68点
4位 Opening Government UNI OF TOKYO A(うち)犬束65点,城谷63点

motionが発表された瞬間、このmotionでOGかぁ…と思ってしまいました。
どのような設定にするか頭をひねりながらラウンドルームへ向かっていると、パートナーが「アメリカで、イラク帰還兵がPTSDになっているのに政府が治療費を出したりしないから問題になっていた気がする」と言ったので、それに基づいて設定することにしました。
実際どのように説明したかというと、「現状ではイラク帰還兵がPTSDになっても、政府は彼らがPTSDであることを認めようとしません(=negligence)。なぜなら認めてしまうと補償に多大な金を費やさねばならないからです。なので、私たちはもし兵士がPTSDであると病院で診断されたら、彼らがアメリカ政府に対し補償を求める訴訟を起こすことができるようにします」という感じです。
うちが出したargumentは3つ。
①政府には兵士を守る役割がある
②兵士がPTSDを克服してより良い生活を営める
③市民の政府に対する信頼を取り戻す
PMのぼくが①と②を説明しました。①では、兵士は国家の安全を守っていくために欠かせないものであり、政府は兵士によって守られている以上、兵士が仕事をこなせるようにそれ相応の補償をするのが道理であるが、現状ではPTSDという彼らの仕事に多大な影響を及ぼすものにたいしてほとんど補償がないので原理原則に反していると説明しました。②では、PTSDに陥ってしまうと、戦場で友人を失ったりした経験からちょっとした音にもかなり敏感に反応して誤って銃で人を殺してしまうようなこともあり、日常生活にさえ支障をきたすこのような状態では彼らはとうてい円滑に仕事をこなせないことを説明。そのうえで、政府が兵士に対する補償をすれば、彼らは病院に行って治療を受ける費用などを得ることができるので、彼らはPTSDを克服することができ、何の支障もなく仕事に取り組んだり日常生活を営んだりできるので、兵士にとって良いのは勿論、国家の安全保障という意味でもこのプランが良い影響を及ぼすと議論しました。
LOは、今でも医療支援はしているからプランは無駄だということと、兵士のためだけに市民から集めた税金を投入することは市民にとってはよくないと反論していました。argumentは兵士の病気を補償するかどうかはcourt systemの問題だからこのプランは意味がない(というような感じだったと思います)というものと、本当に病気で苦しんでいる兵士は今でも医療支援を受けているからこのプランは兵士に無駄な資金を投入してしまうだけになるというものと、人々は兵士の仕事が心の病気を引き起こすかもしれないというようなnegative aspectもあることをわかった上で兵士に応募するべきなので、政府の補償外であるという議論を出してきました。negative caseでこのプランから生じる明確なharmを出していない気がしました。
DPMではcourt systemの問題だなどというのは無責任であること、また今でも医療支援を受けているというが、実際に受けられないでPTSDで苦しんでいる人もいるからその議論は無関係であることを反論で述べ、③のargumentを説明しました。政府がPTSDになった兵士の治療費を保証しないので、市民が政府に対する信頼を失って兵士に応募する市民が減ってしまう(というような議論だったと思いますが、メモがあまり残っていないので少し自信がありません)。
DLOはそもそも補償の内容がvagueであると指摘してきましたが(definitionのときにcompensationといって、自分では治療に必要な金をあげるということだと思っていたのですが、それならmonetaryとかはっきり言った方が良かったかもしれない)、それはLOで言うべきでは、という気がしました。argumentは内容的にLOの繰り返しっぽく聞こえ、あまり新しい議論が出ていると思いませんでした。
CGが出したextensionはfair treatmentというもの。たとえば会社などであれば、従業員が十分に仕事をこなしている限り、雇い主が自分が雇った従業員に対して彼らが必要とする補償を与えるのは当然のことであり、それから分かるようにemployeeには補償を求める権利があり、employerには補償をする義務がある。兵士の場合は政府から雇われているのであるから、政府に対して必要な補償をするよう求める権利があるはずなのに、現状ではそれが認められておらず他の職業の人との間でunfairnessがあるという感じでした。これを聞くとうちが出したprincipleは何かずれてるなと思いました…。
COのextensionはこのプランを採ると兵士に与えられる力が大きくなりすぎるため、兵士が個人的利益を追求するようになり、国や市民のために働くという理念が失われてしまうというものでした。例えば、PTSDなどは偽装するのが簡単なので兵士は金を得るためにそんなことをしたりする。統率が重視されるべき軍のなかでは、そのようなことが起こると規律が乱れてしまうのでこのプランは駄目ということですね。
ラウンドが終了した時点でClosingが1位,2位であることは分かりましたが、正直OOがnegative caseだったので3位の可能性はあるかも、と思っていたのですが…。

ChairはEoin Kilkenneyという方でした。Closingの2チームはprincipleを出せていた上、例などを用いてpracticalityまで落とせていたという評価でした。Openingの2チームはargumentの時間配分が適切でなかったために、practicalityというところまで落ちていなかった、うちで言うと②と③の説明が浅くなってしまっていたと言っていました。なぜプランを採らなければならないかというprincipleと、現在兵士が補償を受けていないためにどんな問題が起きているのか、プランを採るとどのように問題が解決されてよくなるのかというpracticalな面を両方説明しないといけないと言っていたと思います。
要するに、うちの議論はprincipleがlogicのみの理想論に終わっていて、exampleなどを使って現実の状況とprincipleを結びつけることができていなかったのでprincipleが宙に浮いていたということだろうか…。
ラウンド終了後、OOはnegative caseだったから、うちのほうがましだったのではないかという趣旨の質問をしたのですが、確かにOOはこのプランからくるharmを出せてはいなかったが、うちが出したcaseがvagueすぎてこのプランからくるbenefitが何なのか分からなかったのでOOの方が上だったといわれました。

このラウンドで学んだことは、principleを出すのは当然として、それが宙に浮いていては(practicality, 現実のbenefit/harmとのlinkageを説明できていないと)議論として成り立たないということだろうか。

ところで、このラウンドではフィンランドとクロアチアのチームがアメリカのチームよりも上ということで、やはりnativeだから強いとは限らないということですね。と思ったら、Helsinki CはEFL, ESLのタブに載っていなかったのでnativeのようです。でも、Zagreb CはEFLのようなので、やはり重要なのは英語よりも議論をどれだけ深められるかということだなぁ(実際彼らの議論はOOよりも重要なところを突いていましたし)。

次回はR4について書きます。

コメント

匿名 さんのコメント…
質問を聞きに行ったのはいいね。とても大事です。

ディベートというのは、自分の頭の中にあるイメージと、ジャッジに届いたイメージを、いかにすり合わせていくかだから。

自分が話したはずのことが、ジャッジに届いた段階ではどれほどずれてしまったか、確認していくことが上達への近道です。

このモーションは予選の中で一番難しかったからね・・・。PMはnegligenceをしっかり分析して、ポイントに活かしていかないと、点を得るのは難しい。
匿名 さんのコメント…
オープンの6つのラウンドでは、結構質問をしに行きました。やはり、質問をしに行くとどうしてその順位だったのかという理由がより明確にわかる場合が多いし、個人のスピーチについてのfeedbackも結構もらえるので、積極的に質問に行くべきだと感じました。
クローズのラウンドでは、ジャッジの名前はメモしていたのですが、顔を覚えていなかったので後で質問をしに行くということができず残念です。